たとえば、肺の術後に気管支断端瘻をおこして有瘻性膿胸になった患者で、患側どころか対側(健側)肺まで真っ白になってしまう人がいる。
開窓術後、人工呼吸器をつけて陽圧換気を行って(注:肺は傷む)も、酸素化が保てない。こういうときにどうするか?
一つの答えが、ECMO(膜型人工肺)である。V-V ECMO(大腿静脈から脱血して鎖骨下静脈または対側の大腿静脈に送血する)とV-A ECMO(PCPS)があり、動脈塞栓症などの有害事象が少ないのはV-V ECMOのほうだ。抗凝固を入れて、ACT150-200sくらいで、流量3-4L/minで管理する。
なお、挿入には心臓血管外科のバックアップをあおぐ。
ECMOにはリアルタイムでガス分析がみれる装置がついているが、キャリブレーションがずれると全くあてにならないので、必ず生の動脈血ガスを併用して評価する。
呼吸状態がよくなってこれば、ECMO離脱テストとして、酸素化をoff(FiO2 0.21)にして、15分後にガスをはかる。P/F ratioが200-300あれば離脱できる。離脱時には、管をぬいて、管が入っていた静脈を周りの組織ごと縫う。
(なお、抜管の基準も、P/F =200くらい)
もちろん、ECMO回しているとき、人工呼吸器管理中は、自己排痰ができないので、毎日朝夕(必要によっては昼も)気管支鏡で痰のtoilettingを行う。(これが、けっこう難しい。管が入っている状態の気管支鏡は、管の位置によっては解剖を誤認するというリスクがある。挿入は簡単なんだけどね。)
また、lung restのために当然陽圧はかけないのだが、PEEPは幾分(肺胞が潰れない程度に)かけておく。
さて、ECMOを離脱したら、次は人工呼吸器管理と抜管だ。これは、前に書いた(ICUでの抜管)ことがあると思う。
抜管時の条件として、「気道分泌物排出可能」というのがあるが、他の条件はよいのにこれのみ難しいかもしれない場合は、気管切開(ミニトラックという簡易版もある)をおいてから抜管を行い、定期的にここから気管支鏡や排痰を行う。気管切開はICUでもできる。
気管切開のままリハビリもできる。
調子がよくなったらカニューレを抜いて孔を閉鎖する。
呼吸管理も、これはこれですごくやりがいのある医療だと思う。患者さんが劇的によくなるからね。
でも、「手術したのだからこれくらいは責任もってできないといけない」という考え方もある。
やはり呼吸器外科医としてはこれくらいのことができる覚悟を持たないといけない。
このECMOと人工呼吸器と気管切開の連関とか、全然本に書いてないんだよなあ・・・
Toshi
(2023/11/7追記)
いっぽう、「手術中に」肺の機能が足りなくなる、という場合はV-V ECMO(いわゆる狭義のECMO)ではなく、PCPS(=V-A ECMO)を使う必要がある。
V-V ECMOはたとえばIVCから脱血して、SVCに送血する。
V-A ECMOはたとえばSVCから脱血して、大腿動脈に送血する。
手術側の肺がしぼんで、片肺換気は上葉でしかできないようなときに、どちらが必要かは明らかである。
全身の血流を全部右上葉に通すのはさすがに無理じゃ。。。