やばいな。

死んじゃう。

なんとかしないと。

なんなんだ、この辛すぎる現実は。

「そばにいられず、ごめん」 土砂崩れで妻子4人犠牲、一人残された警察官

配信 2024年1月31日 19:43更新 2024年2月1日 00:37産経ニュース

静まり返った自宅で写真立てを手にとった。穏やかにほほえむ妻と3人の子供は、もういない。金沢市の大間圭介さん(42)は帰省先の石川県珠洲(すず)市で能登半島地震に遭い、土砂崩れに家族を奪われた。あれから1カ月。4人を思い出す夜を越えるのがつらい。遺影を前に涙を浮かべ「ごめんね」とつぶやいた。

元日、妻のはる香さん(38)の実家で「人生ゲーム」のボードを囲んでいたときだった。強い揺れに長女の優香さん(11)、長男の泰介(たいすけ)君(9)、次男の湊介(そうすけ)君(3)が驚き、はる香さんのもとに駆け寄った。


大間さんは石川県警珠洲署の警備課長。大規模災害ならすぐ署に出動しなければならない。「大丈夫だよ」。子供たちの背中にそっと手をそえ、「お父さんはお仕事に行かなくちゃ」。とどまりたい思いを振り切り、すぐ玄関を出た。長く激しい2度目の揺れが起きたのはその直後だった。

大きな音を立て、裏山が崩落した。近くの田んぼまで走って逃げた。2階建ての家は基礎部分から土砂に押し流され、妻子4人と親族計11人が飲みこまれた。

「家族みんな死んでしまう、助けてください!」。パニックになり叫んでいた。その後は記憶がおぼろげだ。巻き込まれた11人のうち、義理の兄とその子供の2人は救出されたが、捜索は大量の土砂とがれきで難航した。「苦しんでいるのかな。寒いだろうな」。そればかりを考え、何も手につかない。避難所の夜は長かった。

4日夕にはる香さんと優香さん、5日に泰介君と湊介君が発見された。他に親族3人が死亡、はる香さんの両親はいまだ行方不明だ。

ずっと一緒にいた家族が遺体となり並んでいる。「みんな、いなくなってしまったんだ」。悪い夢を見ているようで、現実の感覚がなかった。

珠洲署には単身赴任。家族と過ごす週末が楽しみで仕方なかった。幼稚園に通う湊介君が「高い高い」をせがむ。病気がちだった泰介君はすっかり元気になり、一緒にキャッチボールをして風呂に入った。年頃の優香さんは歌やダンスが大好き。珠洲へ戻るときは、寂しそうな表情を見せてくれた。


大間さんも珠洲市の出身。妻のはる香さんのことは小学生のころから知っていた。結婚して厳しくも優しい母となり「子供たちはみんなお母さんにくっついていた」。

あれだけにぎやかだった自宅。絵本やおもちゃもそのままだ。一つ一つの思い出が胸に迫り、夜ごとつらさが増す。

4人の遺影に毎日声をかける。「ありがとう」と伝えたいが、その言葉が出てこない。「一緒に死にたかった、というのではないんです」。土砂が襲ったとき、おびえる子供たちに、ただ寄り添っていてあげたかった。「そばにいてあげられなくてごめんね」。そればかりが口をつく。(藤木祥平)

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