現実路線のモデルとなるのが、ミサイルメーカーのMBDAだ。エアバスとBAEシステムズ、レオナルドが共同で所有し、国別子会社を維持しながら一企業として機能している。これが複雑さを解消することにつながった。同社の対空ミサイル「アスター」は、ウクライナで重要性が立証された米国のパトリオット防空システムに使われる「PAC-3 MSE」に欧州で最も近い迎撃能力を持ち、従来の防空システム(クロタルやマズルカ、スパーダ、アスピーデ、シーダート)に取って代わった。MBDAは今年、2023年の2倍に生産量を拡大する予定だ。
このモデルは他の分野に広がるかもしれない。ラインメタルはレオパルド2の後継となる新型戦車KF51「パンター」を開発中で、同戦車のイタリア向け開発に関してレオナルドと協力している。海軍向け造船事業ではBAEや仏ナバル・グループ、独ティッセンクルップ、伊フィンカンティエリ、オランダのダーメンが統合される可能性がある。
投資家は上場企業に分散投資し、各分野に特化した子会社のネットワークから恩恵を受けることを期待できる。
とはいえMBDAのモデルは、国ごとに分断された状況には依然として脆弱(ぜいじゃく)だ。例えば、MBDAのドイツ子会社とフランス子会社は競合する空対地巡航ミサイルを製造している。タウルスKEPD 350(5年間の生産中断後に再開)とSCALP EG(ストームシャドー)だ。合併前の遺産を反映しているのだが、古い製品ラインを残したまま規模を拡大することの難しさを浮き彫りにする。オスロ大学のファビアン・ホフマン氏は、両社の年間生産能力が合計100発にとどまると推計する。これはロッキードの巡航ミサイルJASSM-ERの年産700発をはるかに下回る。
一方、欧州には米国の「THAAD」やイスラエルの「アロー3」のような高高度ミサイル防衛システムがなく、これらの開発には20年かかる可能性がある。またソフトウエアや衛星情報も米国に依存している。
「まず調達システムを修正し、次に企業を互いに競争させ、どこが勝者となるかを見極めて統合を進めるのが最善策だ。ラインメタルはそうだった」とホフマン氏は述べた。
実際、EUは買い手の力を集約させた米国防総省のやり方を再現しようとする。共同軍事調達に利用できる融資枠1500億ユーロを用意し、2030年までに購入の40%を協力的に行う目標を設定した。それでも十分でないかもしれない。
だが、たとえEUの支援があっても多くの国が防衛支出に気が進まない中、より小規模な防衛取引の資金供給に介在するさまざまな資本が存在する。非上場企業が所有する資産の場合は大抵そうだ。
ティケオー・キャピタルやウェインバーグ・キャピタル・パートナーズなどのプライベートエクイティ(PE)投資会社は現在、安全保障関連の中小企業に注目しており、CVCキャピタル・パートナーズのようなPE大手はさらに多くの取引を行う絶好の位置につけている。
また、ベンチャーキャピタル(VC)は、EU当局が明らかにした無人機(ドローン)や人工知能(AI)、サイバー戦など「能力ギャップ」の一部に対処するのに役立つはずだ。モデルとなるのは現在、米国防総省の契約を争っているアンドゥリル・インダストリーズ、パランティア・テクノロジーズ、シールドAIといったシリコンバレーの防衛関連技術企業だ。
2023年にNATOが立ち上げた10億ユーロの「NATOイノベーション基金」の最近の報告書によると、欧州VCによるこの分野への資金供給は昨年、過去最高を記録した。必要に迫られて設立されたウクライナの小型ドローンメーカーが成功したことも、進むべき道を指し示している。
このトレンドに乗る簡単な方法がもう一つある。BNPパリバやドイツ銀行など欧州の主要投資銀行は、合併・買収(M&A)や事業再編の助言、事業拡大のための株式・債券発行という形で手数料の恩恵を受けられる。
欧州の軍産複合体が近々米国に肩を並べることはないだろう。だが長い眠りから目覚めれば、利益を呼び込むチャンスが生まれる。
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May 05, 2025 01:25 ET (05:25 GMT)(c) 2025 Dow Jones & Company, Inc.