テクニカル分析
テクニカル分析は次の仮定に基づいています。
1. 需要と供給が価格を決定する2. 需要と供給が変化したとき、①価格、②出来高、が変わる3. 過去の価格の動きが、未来の価格を占う上で手掛かりを提供する
この立場を取れば投資対象が何であれ、その投資対象に関係する細かい知識や理解が無くても「買い」や「売り」を判断することが出来る……という主張が出来ます。もうひとつ、テクニカル分析の立場として「長期投資だろうが短期トレードだろうが…チャート分析は有効なはずだ」という前提を持っています。ただし手掛かりになるデータは「価格」と「出来高」のみなので、それらの情報の信頼性がとても重要になります。
データのインテグリティ(真正性)に注意を払わないテクニカルアナリストはホンモノのテクニカルアナリストではありません。一例としてCFD(コントラクト・フォー・ディファレンス)では顧客のスクリーンに映し出された価格やチャートは、そのコントラクトがなぞろうとしているオリジナルの価格(一例:ゼネラル・エレクトリックのニューヨーク証券取引所で付いた株価)と完璧に一致しているわけではなく、ひげのような突発的な値段が現れた際、CFDの価格はそれを追いきれないケースも多々あります。
これはどうしてか? と言えばCFDの業者がスクリーン上に提示する価格はあくまでもその業者が顧客と直接対峙して取引する際の「社内レート」なのであり、ニューヨーク証券取引所での価格とは100%一致するわけではないからです。同様に、テクニカル分析ではしばしば始値、高値、安値、引け値の真正性、信頼性に関し論争が起きます。
一例としてFXは立会時間という概念が無く、連綿とトレードされ続ける性格のものである関係上、ローソク足とは相性が悪いです。言い直せば、FXのローソク足は顧客がどの期間を切り取ってそれを表示するか? でぜんぜん変わってくるということです。
市場参加者の或る人は1分足を見ながらトレードし、別の人は5分足を見ながらトレードするわけだから自ずと表示されるチャートからトレーダーが導く「買い」、「売り」の結論は違ってきてしまうということです。
テクニカル分析にはSelf-fulfilling prophecy(自己達成的予言)と呼ばれる大事な作用があります。それは平たい言い方に直せば「みんながそうなると思うから、おのずと株価もその方向へ動く」という傾向です。
これがテクニカル分析の有効性を高め、利用価値の源泉となっている以上、「みんなが見ているものを、自分も見る」という修練がとても重要になります。よく「自分だけのオリジナルのシグナルを編み出した!」という人が居ますが、それらの99%は不完全なバックテスティングに起因する本人の勘違いの域を出ておらず、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」でしかないのです。
みんなが使っているシグナル、みんなが見ているチャートポイントを、愚直に自分も見る習慣をつけてください。
一般にテクニカル分析を信じる投資家は「すべてのニュース、材料は刻々と株価に織り込まれてゆく」と信じています。それは個別企業の業績もそうですし、マクロ経済の動向も含まれます。次にテクニカル分析では強い好材料、強い悪材料があるときは株価は上昇トレンド、ないしは下降トレンドを形成すると考えます。
その場合、トレンドはしばらく続くと考えるのが定石であり、素直にそれにつく、すなわち順張りがトレードの基本になります。
そしてトレンドはそのパターンが崩れるまでは維持され続けるという前提で投資判断するので、ブレイクアウト(=上にそれが破れる)もしくはブレイクダウン(=下にそれが破れる)までは意見を変更すべきでないというのがオーソドックスな考え方になります。株式が取引されると値段と出来高の両方が生じます。
取引がまばらすぎて参照できるプライス・データやボリューム・データが不十分な場合、そのテクニカル分析の信頼度は低いと考えられます。
テクニカル分析ではファンダメンタルズの変化は先ず株価に現れると考えます。だからファンダメンタルズでの動かぬ証拠が出る前に、トレンドが破れた時点で「流れが変わった」と判断するわけです。
これに対してファンダメンタルズ分析では経済指標や決算などのデータが出るまで待ち、そのデータが教えるところに従って投資判断することになります。時にはどんなにファンダメンタルズが良くてもマーケットの地合いが悪く、多くの投資家が損しながら厭々株を売った結果として株価が急落し、マージンコールが発生し、ファンダメンタルズは悪くないし自分も売りたくないけれど強制決済を余儀なくされるというようなケースもあります。
つまりテクニカル分析が万能でないのと同様、ファンダメンタルズ分析も万能とは言えないのです。
公益株のように高配当を出している株の場合、多くの投資家はトレードでそれらの銘柄を買うのではなく、インカム収入を得る目的でそれを長期保有します。その場合、少々株価が動いたところで大部分の株主は動じません。つまり配当利回りの存在が高配当株の値動きをマイルドにしている側面があるのです。
一方、ビットコインのような配当が出ない、業績も関係ない投資対象の場合、テクニカル分析だけが手がかりを提供することになります。よく「株価には先見性がある」と言われ、株価の変化は後の業績や経済の暗転を予言することがあります。これは実際にそういう傾向がハッキリ認められていることから米国のリセッション入りの判定を行う、ノーベル経済学賞受賞者を多く含む全米経済研究所(NBER)が景気先行指標を作成する際、12あるインプットのひとつに株価も含めてあります。
それは経済学者が株価の先見性に敬意を表している事の表れだと言えます。よくテクニカル分析は当たるも八卦当たらぬも八卦だと言う人が居ますが、データの信頼性という点ではニューヨーク証券取引所などの取引所で付いた株価がコンピュータに記録され、それが瞬時に透明性を持って広く発信されることから、ある意味、企業の財務諸表よりもこちらのほうがずっと信頼できると考える投資家も居ます。
実際、企業の決算は様々なウインドウドレッシングが可能ですし、時々、虚偽の報告すらあります。ただテクニカル分析こそが全てか? と言えば、明らかにそうでないケースもあります。突然、悪い決算が出て1日で株価が30%も暴落するということはナスダックの急成長株ではしょっちゅうあることですが、それをテクニカル分析だけですべて予見できるという主張は傲慢を通り越して滑稽です。
つまりテクニカル分析万能主義も、それはそれで偏見に満ちているわけです。