この記事は、特にビジネスマンに読んでもらう目的で書いた。(もちろん外科医にも役立つ。)
突然だが、質問である。あなたは戦略(Strategy)と戦術(Tactics)の違いを説明できるだろうか?
この問いにスパッと答えられない人は、ぜひ読み進めてほしい。答えがわかる人は、読んで答え合わせをしよう。
目次
戦略と戦術
戦略と戦術の違いを尋ねられて、言葉につまってしまう人は多いだろう。我々は戦略と戦術の違いを学校で教わった覚えがない。
なぜか。戦略と戦術って軍隊の言葉なのだ。軍隊が戦争を戦うための戦略論、すなわち軍略にこの専門用語が入ってくる。どうりで平和教育で平和ボケしてる日本の学校では教えられないわけだ。
すると、だ。この軍略を今ここで身につけて知っている人と、知らない人とでは差がつく。今は大した差でなくても軍略に基づいてビジネスするのとそうでないのとでは、確実に雲泥の差になる。
ここで戦略と戦術を定義しよう。
戦略(Strategy)・・・ある目的を達成するために、やるべきことの優先順位をまとめたもの。
(例)
目的:城を陥落させる 戦略:兵糧攻め
目的:敗血症を治療する(医者) 戦略:EGDTプロトコル
目的:日本を占領する(大東亜戦争でのアメリカ) 戦略:硫黄島を陥落させる
目的:Aちゃんと恋仲になる 戦略:心を揺らす会話をして距離を縮め、そのあとデートに誘う
目的:進行度T1aの胃癌を治療する 戦略:まずESD→病理出してだめなら手術
目的:おいしいカレーを作る 戦略:良い食材を選ぶor好きなルーを選ぶorじっくり煮込む
最後の例でわかるように、ある目的に対する戦略は一つではない。
また、大きい戦略と小さい戦略がある。(外科的な医療を例にとれば、治療戦略が大きい戦略、手術戦略が小さい戦略)
次に、戦術(Tactics)を説明する。実は戦術について説明するのがいちばん難しい。
戦術・・・戦略を実行していくと、敵が出てくる。それを適切にいなし、かわし、やりこめる、ひとつひとつのプロセス。たいていは中央の意向にそって現場が判断し、戦術を実行する。
相手大名の城を陥落させる戦で
戦略:兵糧攻め(敵の城の周りを、自軍により、日勤夜勤の交代制で囲い、物流をストップさせる)→中央の意向
戦術:食料を城の中に運び入れようとしているやつがいたら、数人で追いかけて取り囲んで、網で捉える→現場の判断
StageIIIの上行結腸癌(全身状態は良いが癒着が強そう)に対し
戦略:まず術前化学療法し、そのあと手術(開腹右半結腸切除術 D3郭清の予定)→中央の意向
戦術:実際に開腹して見た結果、右半結腸切除術を行うことに決定。→現場の判断
手術中血管の破格があったとする。それに対応し、どこを切ってどこを温存するのか決める。
→現場の判断
戦術とは、戦略よりもより具体的であり流動的なのだ。そして、忘れてはいけないのだが、戦術はうまくいかなければ臨機応変に変えていかなければならない。目的を達成するために必要なのは、戦略を実行することなのだから。
そして、戦術は言葉で書き表すのが難しい。刻々と変わる状況に応じて、戦術も変化しまくるからだ。
正直言って戦術にはクリエイティブな要素が大きい。
戦術は、技能の組み合わせとも言える。(技能については後述する)
〇〇法ってよばれたりするのはたいてい戦術だ。
具体的にいうなら、サッカーがわかりやすいかな。
サイドチェンジ。カウンター。中央突破。サイド攻撃。
これらは個々の選手の技能が組み合わさってできている。
または手術でいうと、出血時に、第一助手が適切に視野を展開し、第二助手が吸引をかけ、術者が出血点をセッシでつまみ、電気メスで焼灼止血する。
以上まとめると、戦略と戦術のちがいは次のようになろう。
- おおまかか、詳しいか
- 中央の意向か、現場の判断か
- 時間軸上での位置の違い(戦略立案してから個別の戦術へ)
- まえもって決めるか、その場で決めるか
- 流動性がないか、あるか
- 戦略はことば、戦術は技能の組み合わせ
- 戦略は動じない。戦術は、その場でクリエイティビティを発揮する
戦術を行うための基礎的能力が技能
さて、戦術を行うための基本的能力は技能とよばれる。
戦争でいうと、槍で相手を正確についたり、馬の上から矢を敵に向けて打ったり、銃で相手を正確に打ったり、狙ったところにミサイルを正確に打ち込んだりする技能である。
手術でいうと、糸結びの技能であったり、意図するところに針をかけ、糸を通す技能であったりする。
これに関しては、日々の地道な積み重ねが大切である。
ふたたび、戦略の重要性
ここで、少し考えてみてほしいのだが、戦術がいくらうまくても、戦略が間違っていたらどうなるか。おわかりだろう。どんなに戦術を完璧に実行しても、何の意味もない。
それほど戦略は重要なのだ。
以上まとめて「技・術・略」
以上の理論を、「技・術・略」と呼んでいる。
技能、戦術、戦略、どれが欠けても戦(ビジネス・恋愛・人生・手術)は成り立たない。
このブログで主に論じているのはビジネスと恋愛と人生であるが、それはすべて戦である。
軍隊の動かし方:軍略を理解することは重要だ。
最後に
戦に勝つための思考法のテンプレート(=フレームワーク=思考の枠組み)として、「技・術・略」を紹介した。
人の上に立ち指揮するリーダーには、必ずこの視点がなければならない。
無論、これを理解していることは前提で、目的に対していかに「戦略」を立案し、「戦術」を臨機応変に決め、日々の努力で培った正確な「戦技」でひとつひとつ潰していくことが大切である。
また、戦略(2024/1/4修正)はある程度机上で学ぶことができるが、戦術は現場で個別のケースをを通してでないと学べないことも多い。
嗚呼、戦は奥深し。
Toshi
(2024/1/4追記:やっぱり、優先順位をつけることって書いてあるじゃん。日本に28年いても日本語喋れん人もそりゃおるわ。)