今回は、現役外科医として、結紮(糸結び)について、誰も教えてくれないけど大切なことを語っていきたいと思います。
目次
結紮≠糸結び
結紮のことを糸結びっていうのは、語弊があります。結紮というのは生体組織を糸で締めること。糸結びは結紮のプロセスの一つです。つまり、糸結び⊂結紮 です。
ですから、糸結びを糸結び単体として考えることはあんまり意味がなくて、生体組織の結紮のために、どう糸を結び、締めていくのかということが重要だと思います。
手袋をつけるとつけないとでは、手技のレベルが大違い
外科医なら、糸結びはみんな練習します。外科には、手術本番で(手術室の中で)身に着けていくべき技術と、手術室の外(練習)で身に着けるべき技術があり、糸結びはまぎれもなく後者になります。
なので練習が不可欠なわけなんですが、この糸結びという技術、素手でやるのと清潔手袋をはめてやるのとでは、手技のレベルが全く違ったものとなります。
ですから、練習するときは、必ず本番と同じ条件で、清潔手袋をはめながらやることを強くお勧めします。
どこを見ながら結紮しているか?
糸を結ぶとき、どこを見ながらしていますか?
初心者によくあるのが、糸を見ながら結紮しているパターンです。これでは実戦で全く使えません。なぜなら、
結紮点がどういう動きをしているのか常に監視していなければ、結紮点がずれたり、最悪引きちぎってしまうことがあるからです。
大事なことをいいます。糸を結ぶときは、常に結紮点を見ていなければいけません。
もう一度いいます。結んでいる糸を見てはいけません、結紮点をみなければいけません。
目的によって結紮法を使い分ける
大概の本には、両手結びのやり方、片手結びのやり方など書いてありますが、それをどういう場面で使うべきかはなぜか書いてありません。
そもそも、両手結び、片手結びと覚えるのではなくて、「こういうときはこうやって結紮する」という風にして覚えないと意味がない、と私は思います。
すなわち、目的別に結紮法を使い分けるということが非常に重要となります。
具体的に言うと、
①深いところで、しっかり締めたい(止血など)の場合
→最初から両手結び。(私の場合)右手で結び目を一回一回しっかり締める。
②深いところだが、そんなにしっかり締めなくても構わない場合
→片手、両手どちらでも可能。無理に男結びにする必要も別にない。
③浅いところだがしっかり締めたい場合(乳がん手術の動脈性出血など)
→最初から両手結び。(私の場合)右手で結び目を一回一回しっかり締める。
④浅いところで、そこまでしっかり締めなくてもいい場合(ドレンの固定とか)
→片手結び一択!スピード重視!
まとめると、
・深いところorしっかり締めたい場合→両手結び
・浅いところでそんなに締めなくてもいい→片手結び と使い分けます。
※ちなみに機械結びは、浅いところの糸を結ぶときにしか使いません。
糸の取り回しの長さや、右手左手でかけるテンションによって、糸結びのやりやすさはだいぶ変わる
糸結びのやりやすさは、本当にいろんな要素によって変化します。
例を挙げます。
まず、糸の長さ。両手結び(左手で糸をクルッとする)の場合は、右側が短い方が有利です。
片手結びの場合、結ぶ手の側が長いほど有利になりますが、あまり長すぎると一発ひっぱっただけでは結紮を完了できないため、片手結びのメリットを生かしきれません(片手結びってこういう意味でも難しいですね。修練を積んだ人向けの結紮方法といえます)
また、
片手結びでは、結ぶ手と逆側の手でテンションをかけすぎると、結ぶ手で掌を返すときに邪魔になってしかたありませんので、くるっと掌を返すときには、逆側の手でかけている糸のテンションをゆるめるようにしましょう。
最後に
こういう風に見てみると、糸結びって非常に奥の深い技術だなと思わされます。
もっと練習しよう。。。
Toshi