肺葉切除lobectomyにおいては、さまざまな合併症が発生しうるが、いちばん怖いのが出血である。

右肺葉切除においていちばん怖いのは、A6の枝としてA2bが存在する場合である。

この場合分葉は悪く、うかつに葉間をわけるとA2bを損傷して大出血することがある。

拍動圧の高さは開胸手術でみたであろう。だから、絶対に事前にCTで確認しておかなければならない。

自分ひとりで手技をやるというのは、かくも怖いものか。

具体的な手順を示す。

まず、後側方開胸をおこなう。

基本第5肋間で開胸するのだが、肩甲骨の一横指下から水平に切り、肋間の線へとゆるやかにつなげる。

すなわち、水平な部分と肋間にそった部分がつながる感じだ。

広背筋の前面と後面をだして前鋸筋との間をケリーやペアンで通し、電気メスで切る(もしくは結紮切離)

そして肋間筋を、(肋骨を尾側まな板として使いながら)切っていく。背側まで

第5肋間をあけ、必要なら第5肋骨(or/and 第6肋骨)を切離する。

(胸郭を切除する場合などは、肩甲骨の下の水平線から、棘突起と肩甲骨の間を通る頭尾側方向線(まっすぐの線)へとなめらかにつなげる。また、肩甲骨の下に手を入れると、肋骨を直に数えることができる。

肋骨は、外から数える方法(上から、下から)もあるが、内視鏡で内側から数えたり前述のとおり肩甲骨の裏に手を入れて触って数える方法もある。

いずれの場合でも5肋間で開けるというこだわりは死守したい。)

肋骨切離の仕方は次のとおり。

必要に応じて肋間動静脈を処理する。肋骨尾側の溝にそって穴をあけて通し、結紮切離する。

そしてその部分を肋骨剪刀できる。あくまで肋骨を切って肋間を開きやすくすることが目的であり、肋骨を「切除」する必要はない。よってできるだけ背側できる。(切る場所は1つの肋骨につき一箇所)

全体的に言うと後側方開胸は前から見てやった方がやりやすいかも。)←太字は、実際やってみて思ったこと

開胸器をかけて、いよいよ肺葉切除開始だ。

まず王道の葉間(三葉合流部)から・・・でもよいが、ここで肺動脈を絶対に傷つけないように注意する。

道具は現代風にLigaSureを使うか、それかハサミでおこなう。電気メスでやる方法もある。ここら辺は施設によって違うが、自分のまわりではハサミを使った剥離をする人が多いかな。いや、N先生は電気メスで綺麗に剥離していくけど。

話を元に戻す。

肺動脈をある程度だせたら、葉間を作成しよう。

(最初に肺靭帯を切った方がよいかもしれない)

肺靭帯の一番下のところは血管があるので結紮切離またはLigaSureできる。その後上へきりすすむ。

肺靭帯は前後両方あるので、両方とも膜を切る。

肺靭帯をきると右下葉が可動化し、操作がやりやすくなるし、葉間作りやすくなる(そもそも切らないと作れない)し、肺静脈も見えてくるので一石三鳥だ。ただし迷走神経や食道の損傷にはくれぐれも注意すること。

さて中下葉間を作製しよう。

#11iのリンパの外側(動脈の逆側)を掘っていき、「葉間作成時のとっかかりの穴」をあける。

この操作は、通すだけならリガシュアやはさみ、そっから広げるにはケリー(場合によってはライトアングル)を使う。

葉間のブジーはガバッと広げてよい。葉間はエシュロンでいうとゴールド、EndoGIAなら紫で切るとよいだろう。

いっしょに上下葉間を作製してもよい。

11sの外側(PAに対して)を掘り進め、通して同様にブジーしてエシュロンゴールドできる。

次にIPV(下肺静脈)を切離する。

SPVやIPVは肺靭帯を切っただけではまず見えない。なのでしっかりと当たりをつけて周りの組織と剥離していく。峰打ち法やパカーを使って静脈の尾側縁を出す。頭側縁は、後ろからだけではなく前からも掘って(やって)出す。具体的に言うと、前からやって、中葉にいくPVとIPVの上縁の境を出す。出したら後ろで通せる。

2-0糸をかけて、あごつきのホワイトで切離する。このとき、V6が確保できているかよくよく確認する。V6を確保し忘れていたら大変だ。(あとから何も考えず掘っていったら大出血する!)

次にメインイベント、PAの剥離だ。PAはシースに包まれているので、シースとの間で良い層に入って剥離をする。今の自分にはやっぱりハサミがいいかな。さてPAを葉間で掘るときは、だいたいここかなというところを意識して掘っていく。A8から見え始めることが結構多い。底区のPAとA6を別で切離するのか同時に切離するのかはしっかり決めておこなう。今回は別々で切離した。OK?

ちなみに底区肺動脈はエシュロンあごつきホワイトで切離し、A6は3-0バイクリルで二重結紮した。峰打ち法は、周囲組織損傷のリスクが大きく、平行法は枝を損傷するリスクが大きい気がする。

(O先生には悪いが、総合的に考えて峰打ち法の方が安全なのではないかと考える

通すときは無理矢理通さず、抜くとき(糸を通すときも!)は無理矢理抜かない。とくに抜くときや糸を通すときが危険である。通しているものを変える(はさみから直角へ変えるなど)ときは、2本同時に入れることはできないが、前に通していたものの方向を覚えておいて、前に通していたものをさっとぬいて、次に通すものをすっと入れるようにする。道具の管理って大事。

あと、血管の剥離が不均一だと、一本めの糸が通っていても、二重結紮の間隔が全然とれなかったりすることがあるので、そういう時は後ろを再度剥離するようにする。

しかし、PAの後ろはあまりブジーしてはいけない。枝の股が裂けたり引っこ抜けたりすることがあるからだ。

また、股があるときは又の周囲(T字の直角部分)をよく剥離していくようにする。

さて、底区PAとA6をきったら、あとは気管支の剥離と切離だ。気管支をやるときは、BAを適宜結紮切離したり焼いたりするようにする。ここもやっぱりリガシュアがいいかな。

リガシュアは本当にいい道具。

気管支の後ろには(あんま奥に行きすぎない限り)何も危ないものはないので、がんばって通せばいいのだが、

通ったら気管支切離より先に#7を郭清しておいたほうがいい。切離が圧倒的にやりやすいからだ。

また、通すだけでなく切る前に気管支の首をある程度長くしておく。ひさしを作る?とは、葉切ではあまり言わず、区域切除でよく言われるらしい。

気管支をエシュロンブラックで切離したら切れる。

これで下葉切除は完了。

下葉の場合、ND2a-1は7 8 9 10までだ。

ベッセルシーラーとLCS(超音波凝固切開装置)の原理の違いを知りたい

Toshi 

呼吸器外科

(ベッセルシーラーとLCSの違い)

ベッセルシーラーは電気メスの凝固モードを強力にしたもので、「はさんで焼く=バジング」の発展版な感じ。

LCSはガチの摩擦熱で組織を凝固させて切る。電気を細胞に流すわけではない。

(2023/9/1追記)葉間はすべてに優先する。中下葉間は裏切らない。

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